ジャズ演奏の現場では、「コード譜を見ながら弾くのは甘え?」という議論がたびたび持ち上がります。実際、プロでも譜面を見て演奏する人はたくさんいますし、完全に暗譜で演奏する人もいます。では、どちらが正解なのでしょうか?
僕の経験からの結論はジャムセッションでよく演奏されるような曲は暗記した方が良いです。なぜ暗記した方が良いのかというと、この練習をすることによって頭の中で楽譜が見れるようになるからです。そして視覚に使っていたメモリが解放されて耳をもっと使うからです。
例えば、
All things you are
Autumn Leaves
Take The A Train
Rhythm Changes
All Of Me
There Will Never Be Another You
これは脳トレですね。逆に楽譜のコードをだけを追ってると何年練習しようと楽譜なしでは演奏できなくなってしまいます。今回は僕の失敗談を含めてコード譜の「見る/見ない」問題について掘り下げてみましょう。
【ジャズ】演奏中にコード譜を見るのはあり?暗記するべき?
失敗談:楽譜は暗記しようと思った夜
ジャズを初めて楽譜を見れば大体の曲がなんとなく弾け始めたころ、あるライブハウスでのジャズセッションに参加することになり僕は張り切って準備しました。演奏する曲も事前に伝えられていたので、楽譜を用意して穴が空くほど練習。完璧に弾くぞ!と意気込んでいました。
そして本番。1曲目は順調。でも2曲目――ちょっとしたトラブルが起きました。
サックス奏者が曲のフォームを自由に崩し始め、ピアニストもつられて変則的なアプローチに。まさにジャズの醍醐味ですよね。ところが僕は…楽譜から目が離せない。コード進行が書かれていない部分に来た途端、完全にパニック。
「え?今どこ?今何のコード?ていうか次どこに戻るんだ?」
焦っているけど、ベースを弾くのをやめたらやばい!僕が変なコード弾いてみんなを混沌にも陥れたくない!自分のベースの音も自信がない音になり、他のメンバーとの一体感がどんどん薄れていきました。アイコンタクトも取れず、音に反応する余裕もない。気づいたら自分だけタイミングがズレていて、サックスの「何やってんだよ!」という顔をされたのを今でも覚えています。
この経験から気づいたこと
このとき強烈に思い知ったのは、「譜面を見すぎると、音楽の流れに乗れなくなる」ということ。譜面はあくまで参考であって、ステージでは「聴く」「感じる」が何より大事なんですよね。
その経験以降、「譜面を使うなら必要最小限に」と意識するようになりました。自分の耳をもっと信じようって思えた、ちょっと苦いけど大切な夜でした。
暗譜のメリット
この練習をすることによって頭の中で楽譜が見れるようになるからです。そして視覚に使っていたメモリが解放されて耳をもっと使うからです。
暗記をするためにコード進行を理解する必要があるので曲の理解が深まる
曲の暗記は化学式の暗記とは違います。初心者のある間違いが化学式を覚えるように丸暗記しちゃうんですね。そうじゃなくて音楽的に構成を理解して覚えます。こうすることによって僕の失敗談のようなことが起こっても対処できるようになります。
コード進行を理解して暗記していると他の曲でも応用できるようになる
ジャズの曲はやまほどありますが主要な曲を暗記すると新しい曲の理解も10倍くらい早くなります。これはマジです。
曲を暗記すると脳の使い方が変わって頭の中で楽譜が見れるようになる
楽譜を見ないことにより、弾いている曲の構成を頭の中で作る必要があります。僕の場合はiReal pro のような簡素なコード譜を頭の中で浮かべます。
視覚に使っていたメモリが解放されて耳で音楽を理解できるようになる
このように暗譜することで視覚で使っていたメモリが解放されてもっと耳に集中できます。そうすると自然とロストもしなくなるし、アドリブ能力もあがります。
まとめ
コード譜を見ることを「甘え」とする風潮もありますが、それは誤解です。プロのジャズミュージシャンでも、場面によってはコード譜を活用しています。大切なのは、「コード譜に頼りすぎず、音楽を感じること」。つまり、コード譜はあくまで補助的な存在であり、演奏の本質は「耳と心」で行うものなのです。
譜面を捨てることが目的ではなく、譜面を越えて音楽に没入することが目標です。あなたの音楽がより自由になるよう、自分なりのバランスを見つけてみてください。