この本は学校に行ったわけではなく、ゼロから劇作家、パフォーミングアーティスト、演出家、漫画家、アニメ監督などとして活躍する小林さんの本です。お笑いの『ラーメンズ』の小林さんです。
この本では、小林さんの作品制作に対する心構えから、具体的なテクニックまで書かれています。アーティストの仕事風景や、考え方を聞ける機会はなかなかありません。
この本を知ったきっかけはヲノサトルさんのツイートからで、メチャクチャ面白い本です。
メディア芸術学科の学生から、来年度の新入生のために「メディアアートの教科書」の推薦を求められたので、小林賢太郎さんの『僕がコントや演劇のために考えていること』を挙げておいた。いわゆる教科書的な教科書は名だたる他の先生が挙げてくれるだろう。この本は(続
— ヲノサトル (@wonosatoru) 2019年2月25日
僕は作曲をしているわけですが、読んで思ったのは舞台作品と作曲って本当に似ていること(というか同じ)。おそらく詩や造形、漫画なんかでも使えると思います。自分の備忘録としても、印象に残ったところを紹介したいと思います。
あなたがこれから1人のアーティストとして生きていく、もしくは既に活動しているとしたら読んでおいて損は絶対にない本です。
クリエイター、アーティスト、芸術家なら必読!『僕がコントや演劇のために考えていること』小林賢太郎
情報を制限して、観客のパーソナルに入り込む
コンビニが舞台のコントで、衣装さんが色々なコンビニのエプロンを準備されていたが、エプロンは無地、もしくは使わないそうです。
コントの流れでお客に「そこがコンビニである」想像させるそうです。すると見ている側は自分が良く使うコンビニを想像します。それが『観客のパーソナルに入った』ということ。
小説や音楽でも事細かに描写するのではなく、聴衆に想像の余地を与える。細かな表現を得意とする作家さんもいるわけですから、もちろんいつでもそれが良いわけではないですが。
難しい方を選ばないと、誰かが出した結果しか出せない
簡単なやり方と実現が難しいやり方、その二つの選択肢があったばあい、難しい方を選ばないと誰かが既に出した結果しか得られない。
何かアイデアがあって、それが実現が不可能に見えることも、想像できるなら実現できる。
自分は何が好きなのかを知り、なぜ好きなのかまで考える
音楽、絵画、映画、なんにでもある自分が『好き』なポイント。
その『好き』を なぜそれが好きなのかまで突き詰めると、自分の作品にオリジナルを生み出すヒントが隠されているかもしれないという話。
「何が好きか」だけ集めても、それらを真似た作品しか作れません。しかし「それがなぜ好きなのか」ということは自分の中に答えがあることです。オリジナルを生み出すためのヒントをつかめるのです。
『想像筋』は調べないことで鍛えられる
想像筋というのは著者の造語でしょうが、何か分からないことや、不可思議なことがあったらすぐに調べずまず自分で想像してみると言う方法です。今はなにか分からなかったらすぐ Google ですね。。。
知らない動物の名前からその動物の生態を。
キッチンのジャムの蓋が開いていたら、犯人探しをするのではなく、なぜジャムは外に出ようと思ったのか想像する。
小さなことから想像を膨らませる。映画『アメリ』の女の子のような感じでしょう。
つくる順番
最初に書くのは台本の1行目ではありません。まずは構造のアイデアからです。つくりたいものの全体のルール、僕は「しくみ」と呼んでいます。 次に、その「しくみ」の力が一番発揮できるオチを考えます。とってつけたようなオチは避けたいので、構造を活かした切り口をいくつか探します。
(『僕がコントや演劇のために考えていること (幻冬舎単行本)』(小林賢太郎 著)より)
これは作曲も同じで、突然メロディーを書くものではありません。
まず、全体の構成を考え、モティーフがあり、テーマがあり。。。。最後のオチはエンディングですね。他の芸術も突然作り始めたりはしないですよね?ある程度のレベルに行ったら突然作り始めてるようでも、そこに至るまでの考えが経験則などで出来てるはずです。
コントの台本は地層のように重ねてつくる
僕のコントの台本は地層みたいにいくつかの層が重なり合ってできています。
下に敷いてあるのは、ストーリーそのものが持っている面白さ。作家小林が企んだ笑いのための大きな仕組みです。
その上にのせてあるのは装飾的な笑い。言葉遊び、語感、テンポ、身体表現など。 これらが重なっていることで、程よい複雑さをつくることができます。面白さの種類が豊かなコントにしたいのです。
(『僕がコントや演劇のために考えていること (幻冬舎単行本)』(小林賢太郎 著)より)
これも深い話です。
上の写真見ても思うけどもっと、風景的に作曲できるんじゃないかな。
完成品を素材にする
まず、自分ひとりの脳みそで考えてコントを1本完成させます。この段階で充分ライブで成立するクオリティまで持っていきます。でもこれは上演しません。 次に、そのコントのことを1回忘れます。まったく違うことに気持ちを向けたり、何日か放置したりします。それからそのコントを取り出して「素材」として扱うのです。“僕がコントや演劇のために考えていること (幻冬舎単行本)
売れる準備ができているか
売れてる人には共通点があります。それは、売れる準備ができていた、ということです。 準備ができていないのにパッと注目されてしまうと、またパッと消えてしまいます。チャンスが来るかどうかは運かもしれません。でも、チャンスをものにできるかどうかは、それまでの準備次第です。漠然と「売れたい」などと、呑み屋で吠えているのなら、売れる準備に精を出すべきです。(『僕がコントや演劇のために考えていること (幻冬舎単行本)』(小林賢太郎 著)より)
コントの制作風景
この動画ではお題をもらって三日以内にコントを作るというもので、その製作過程を追っています。
自分の自由なアイデアを現実にしていく想像力。しかも、妥協がないプロの仕事で本当に素晴らしいです。
まとめ
すでに芸術家、クリエイターの方々、これから目指す方も絶対に読んだほうがいい本です。
紹介したのはホンの一部で他にも素晴らしい話が沢山のっています!超おすすめです!