スペクトル楽派というのは音を構成する倍音成分に注目した音楽です。
例えば楽器で ド の音を鳴らすと、同時に色々な音が鳴っています。これを倍音と言いますが、それを顕微鏡でみるような感じですね。
倍音についてはこちら
ここではそんなスペクトル楽派と呼ばれる音楽を見ていこうと思います。
でも、スペクトル楽派に含まれないかも知れないけど、そこら辺の作曲をしてる曲も含みます。
スペクトル楽派について、音楽の紹介
Giacinto Scelsi/ジャチント・シェルシ
最初に紹介するのはイタリアの作曲家シェルシの Quattro pezzi su una nota sola (“Four Pieces on a single note”)。
この作品が「ひとつの音」(一つの音を聴き込む、という手法)による最初の作品であると言われています。この作品が後の作曲家に多大なる影響を与えました。
スペクトル楽派とIRCAM/ イルカム
IRCAM はフランスの音響および音楽の探求と共同のための研究所です。
IRCAMの開発したソフトに Max/MSP、OpenMusic などがあります。このOpenMusicで『ある音』を解析して音符にすることが出来ます。
OpenMusicで音を解析する
音を解析して音符にするわけですが、そのことを理解するのは、スペクトルの知識が必要です。
スペクトルに関してはこちらで説明しています。
スペクトル楽派の考察
インターネットで見つけた論文を貼っておきます。
Guide to the Basic Concepts and Techniques of Spectral Music
GÉRARD GRISEY/ジェラール・グリゼー
Les Espaces Acoustiques/音響空間
全曲にわたって ミ(E) の音の倍音に基づいて書かれていて、純粋な倍音から噪音(ノイズ)を多く含む音、そして完全なノイズに至るまでの、さまざまな音響スペクトルの推移を描いています。
夏田昌和さんの論文でこの曲のことも書かれています。
夏田昌和: スペクトル音楽とは
Tristan Murail /トリスタン・ミュライユ
Gondwana (1980)
黛敏郎「涅槃交響曲」
涅槃はサンスクリット語で『Nirvana』。ニルヴァーナというバンドも有名ですね。
涅槃(ねはん)、ニルヴァーナ(サンスクリット語: निर्वाण、nirvāṇa)、ニッバーナ(パーリ語: निब्बान、nibbāna)とは、一般にヒンドゥー教、ジャイナ教、仏教における概念であり、繰り返す再生の輪廻(サンサーラ)から解放された状態のこと。
インド発祥の宗教においては、ニルヴァーナは解脱(モークシャ,moksha または ムクティ,mukti)の別名である。
すべてのインドの宗教は、ニルヴァーナは完全な静寂、自由、最高の幸福の状態であるだけでなく、誕生、生、死の繰り返しであるサンサーラからの解放と終了であると主張している。
仏教においては、煩悩を滅尽して悟りの智慧(菩提)を完成した境地のこと。涅槃は、生死を超えた悟りの世界であり、仏教の究極的な実践目的とされる。完全な涅槃を般涅槃(はつねはん)、釈迦の入滅を大般涅槃という。この世に人として現れた仏の肉体の死を指すこともある。仏教以外の教えにも涅槃を説くものがあるが、仏教の涅槃とは異なる。
Wikipedia から引用
涅槃 - Wikipedia
鐘の音を分析してオーケストラで演奏
黛敏郎さんは、梵鐘(お寺に置いてある鐘)を打つ音を解析した上でその音をオーケストラにて再現するという手法も取りました。
上の曲 Gondwana と同じですが、1958年の当時は IRCAM も無く、スペクトル分析は出来ませんでした。その結果は 第1楽章 – カンパノロジー I でその音を聴くことが出来ます。
曲の内容を黛さんの解説と共にまとめている方がいました。
黛敏郎《涅槃交響曲》(1958 年)の「カンパノロジー・エフェクト」に関する一考察
ちなみに武満徹さんの若かりし頃、ピアノがなくて困っている時に、ピアノをプレゼントしたのは黛さんです。
Peter Ablinger
人の話し声を解析してピアノで演奏したものです。
普段の会話もこんな複雑な和音で構成されてるんですね。。。。
そういえば、スティーブ・ライヒも人の話し声の音程を作曲に取り入れてました。
Peter Ablingerのものではありませんが、ポップ音楽で試したもの。
ピアノの音だけなのに歌詞が聞こえてきます。脳が勝手に変換してるんですね。
つづく。。。